ラノベ寄稿

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【感想】誰にでもできる影から助ける魔王討伐_第一部「なるほどこれはビジネスだ」

誰にでもできる影から助ける魔王討伐<誰にでもできる影から助ける魔王討伐>

 

 ラノベ貴公カクヨム一位のアレです

 

魔王クラノスが人類に宣戦布告して十年。
大国ルークスは、異界から聖勇者・藤堂直継を召喚した。
そんな彼をサポートする命を受けた僧侶アレスは、集められたそのパーティメンバーを見て愕然とする。
魔導王を始祖に持つ魔導士リミスは、火系統以外の魔法が使えず、
プラーミャ流剣術最高師範、剣王の娘、アリアは最近流派を変えたばかりだという。
さらに肝心の聖勇者は、女性ばかりを傍らに置き、無謀な行動を繰り返す……。
しかも平均レベルが15って、どうやって倒すんだよ魔王。色物集めてんじゃねえぞ。
そこでアレスは自分のレベルを隠し、彼らの旅が円滑に進むよう影からサポートするのだが――。
並みいる強敵は事前に退け、彼らの失敗は完全隠蔽。
これは、ハイ・プリーストであるアレスが、聖勇者を英雄に導くまでの物語。

 

ラノベ貴公「うむむ、異世界……勇者召喚……」

理性「おまえそういうの好きじゃん」

 

嫌いではない。感想です。

 

「異世界勇者召喚もの!」と銘打った割に、導入からストーリー展開までが滑らかで話にスッと入っていける。第一話で設定や作品の雰囲気が理解できる、商業的に見ればたいへん効率的、あるいは、これはビジネスだ。

テンプレかと思いきや、特に無理や無茶もなく構成を練ってある。

まあある意味で無理や無茶しかないんですが、それを(物理で)昇華していく工程に面白味がありますね。筆者の文章力もあってたいへん読みやすい作品。さすがカクヨム一位なだけある。

 

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 会話のテンポがハリウッド調というか。言語化すると、相手の話を受け流して皮肉で自己主張するというか、web小説にしては独特ですごい好きな文体です。主人公の性格に起因しているのか筆者の文体かまでは分かりませんが。

個人的に気に入っているのは第十三レポート。枢機卿との掛け合いの合理的でいて意表を突くような会話が心地いい。

 

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重ねて言いますが、ストーリーがよく練ってありますね。第一報告の途中までしっかり読ませて、「こういう話かな?」と思ったところであっさり読者を置いていく。しかしその瞬間にすべてを悟らせられた。これはやられたなぁ。

 

勇者が無能すぎる事案のせいで物語に起伏ができて、読んでて飽きないですね。なんという狂言回し……。アレス視点からでは勇者はブラックボックスな存在で、それで良しとするアレスもアレスなわけですが、上手いこと設定にハマってるものだから絶妙。

 

懸念の戦闘シーンはアレスが一方的なので読みたいもん読めた感(満足)

 

 総評して手堅く面白い。設定も深すぎず浅すぎず読みやすくよく出来ている。黎明期のなろう作品といった感じでありながら新しさもある。一位に相応しい作品かと。

 

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