ラノベ寄稿

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【感想】りゅうおうのおしごと6「まーた主人公将棋してない」

りゅうおうのおしごと! 6 ドラマCD付き限定特装版 (GA文庫)

 

ラノベ貴公「俺は好き」

 

「重度のロリコンですね。治療法は死ぬしかありません」
竜王防衛を果たし、史上最年少で九段に昇った八一。二人の弟子も女流棋士になれて順風満帆……と思いきや、新年早々問題発生!?
不眠症や変な夢に悩まされ、初詣で怪しげなおみくじを引き、初JS研では小学生全員に告白され、弟子の棋士室デビューは大失敗。おまけにあいはロリコンを殺す服を着て既成事実を作ろうと迫る。殺す気か!!
そんな中、銀子は奨励会三段になるための大一番を迎えるが――新キャラも大量に登場! 熱さ急上昇で新章突入の第6巻!!
新時代の将棋の歴史は、ここから始まる。

*ネタバレ有

 

《TVアニメ化決定! 》
このライトノベルがすごい! 2017 文庫部門1位! 》
《シリーズ累計50万部突破! 》
《第28回将棋ペンクラブ大賞優秀賞受賞! 》
《監修は関西若手プロ棋士集団「西遊棋」! 》
朝日新聞書評欄掲載! 》

 

はぇ~すごいっすねぇ! amazonのあらすじデカデカと記載してありました。

さて感想です。

 

銀子の三段昇給戦がメインとなった本作。

 

ラノベ貴公「銀子さんこれ完全にヤムチャ……」

   理性「浪速の白雪姫www」

 

銀子SAGEしないと気が済まない病気かな? その枠は佳香さんあたりで勘弁してやれよ……

 

女性ということもそうですが、「才能のない棋士」という点で佳香さんを彷彿させるシチュエーションでした。ただ佳香さんは年齢制限との葛藤に重点が当てられていた半面、銀子は勝負師としての苦悩がメインとなっていて全く新しいものとして昇華されていましたが。

 

今回では銀子が苦悩を乗り越えたわけでもないので消化不良なまま終わってしまいましたねー。

読みたかった「竜王戦以降の主人公の立場」というのもあまり描写されておらず、五巻の爆上げから一気にテンション下がったな、という印象。もちろん作品としてのクオリティは高いものだったけれど、そこが残念だったかな。

 

まああらすじにも新章突入と書いてあるので、たぶん溜め回なんでしょうけど。

 

さて個人的見所はなんといってもAI×将棋の議論。

 

私も詳しいわけじゃないんですが、割と最近の将棋界はAIを使ってると聞きますね。

最近話題の藤井四段の将棋はAIに近い、序盤から動きのある戦術だというのをどこかの記事で読んだことがあり、本作の新キャラ・椚創多とクリティカルで被って見えました。創多、単なる男の娘枠とか思ってごめんな……

 

既にボードゲームでAIが人間に勝っているという事実は議論にならないほど認知されています。

 

wired.jp

 

Googleが将棋に手を出したというのは聞きませんが、単純に考えて選択肢が囲碁より少ない将棋でAIが劣るとは思えませんしね。

 

となるといよいよ棋士という職業はオワコンなのかというと、そんなこともないでしょう。

 

野球でいうところの、時速200kmのピッチングマシーンに投手やらせることに意味があるのかって話です。

 

あくまで人間の娯楽なんだから人間がやってなんぼのもんだとは思うんですよ。

ただ、本作でも言及している通り棋士というのは勝った負けたな生き物なわけでして、当人からすればAIに敗北してはいそうですかとはいかないでしょう。

 

例えば作中での於鬼頭曜からはそのような葛藤が伺えました。

 

んー、この「AIには絶対に勝てないけど、勝った負けたにはこだわる」ってどこか矛盾してる気がするんですよねー。人に勝ちたいってだけなら気持ちは理解できるんですけど。

人間の中で一位を取ってもAIには絶対に勝てないわけで、それって勝負師の彼等には虚しくない……?(こんなこと言ったら全国の棋士に怒られそう)

 

もしかすると創多が銀子との対戦で見せた「詰めろ逃れの詰めを返す」というのは機械の視点がある故に見せた一手なのかもしれませんね。つまり勝つためではなく、娯楽として場を盛り上げるための「人間味ある」一手。

 

うーむ、理系人としては興味深い一冊でした。というか携帯でsshってできるんですね。重そう(小並)