ラノベ寄稿

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【感想】ギルドの新人教育係(自称)「物語として破綻した物語」

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ラノベ貴公「ある意味なろうらしい」

 

 冒険者カーマセンは毎日酒を呑む。
 酒代はたまに狩りをして稼ぐ。
 そして新人の冒険者が来れば因縁を付ける。
 理由は秘密だ。
 そのカーマセンの住むイストの町は田舎に有って平和な筈である。
 そしてそこにあるのは男の背中。

*ネタバレ有

 

ラノベ貴公「ギルドの新人教育係……あ、ふーん?」

 

これ知ってる、元勇者とか魔王とかがギルド運営する感じのアレでしょ? いまいち嵌ったことないんだよねぇ……。

と思いながらも、章タイトルが面白そうだったのと、完結済みで四半期ランキング入りしてたので、読書。

 

ラノベ貴公なんかすげぇ読みにくいんだけど

 

行間無さすぎぃ! はー、キレた帰る(ブラウザバック)

ここまで先月。いやほんと一話が読みにくくて仕方ないんですよね。「おにぎりスタッパー」もこれが理由で読めてないんですけど、web小説投稿者は読者にもう少し親切でもいいと思います!

 

まあしかし今回は四半期ランキングを信じて我慢して読み進めることに。

 

主人公・カーマセンは三十路を超えた酔っ払いのろくでなし、万年中級冒険者という設定。どうやら元勇者だの魔王だのではないらしい。うん私知ってた!

 

中級冒険者というのは文字通り中級という意味で、シルバーだのSレアだの星3だのBランクだのそんな立ち位置。

上級冒険者を諦めたおっさんが日がな路銀を稼いで冒険者稼業を続けている、というと私は「遅咲き冒険者(エクスプローラー)」を思い出しますね。更新止まってるじゃねえか! また作品がひとつエタってしまったか……さておき。

 

あーつまりこれは中級冒険者がチートを手に入れて上級冒険者になる話なんだろうな? という予想。

 

先に結論を言うと、全然そんなことはなかったのぜ……

 

本作は短編形式で、冒険者たちの出会いから別れまでを書いている。そこだけに主軸が置かれている、似非中世ではないこってりとした王道ファンタジー。なろうらしいとは言わないけれど、安定した面白さがありました。

 

七章までは、な……

 

いい意味でも悪い意味でも期待を裏切ってくれた七章。

襲い来る獣の軍勢に、しかしカーマセンの選択は、一つしかなかったのだ。

 

七章最後はボロボロ泣いてました。カーマセンや老人会がマジでハードボイルド過ぎる。

 

 

以下は七章含むガッツリとしたネタバレになっております(注意)。

 

 

 

私も七章の最初の頃は「かつての弟子の窮地にカーマセンが駆け付ける展開かな?」とか思ってましたよ、ええ。

ところがイストがピンチということで、「これはカーマセンの窮地にかつての仲間が駆け付ける展開かな?」とも思いましたよ。

 

というか普通駆け付けるんですよ! そうでないと今まで出会いと別れを書いてきた短編が全て破綻しますよ!

 

破綻するんですよほんと……

 

カーマセン、死ぬのかぁ。

これは驚いたな。じゃあ何のために今までの短編があったんだよって話ですよ。伏線とか鼻で笑うように吹っ飛ばすものだから唖然。

それでもボロボロ泣かせるだけの力がある作品だったとは思います。

最終章のプリスについて書かれたたった六行が最高なんだ……。 

 

作者のあとがきアルファポリスの方に上がっていたので読んだのですが、そこで納得してちょっと泣いた。この作品は非常なまでに出会いと別れを書くことに徹底していたんですね。私の考えていた伏線など「そこは作品の本質じゃない」と言わんばかりにすっ飛ばしてきました。

 

正直、ウルザの描写が足りてないことや他のキャラクターのその後が描かれていないことが気になりますけれど、それも含めてカタルシスということで。

 

久しぶりにガツンときた作品でした。冒険者に、乾杯。

 

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