【感想】飼い猫になって百合カップルのイチャラブ生活を見守るお話「尊い。」
ラノベ貴公「kindle unlimitedに入った記念です」
社畜ОLたま子はある日不慮の死を遂げる。だが気がついた時、彼女はもふもふの仔猫になっていた! 小学生から大人になるまで、大好きなご主人様の成長を見守り、恋を応援する! 女子三人+飼い猫(百合厨)の、甘くてちょっぴりほろ苦い百合ラブストーリー!
＊ネタバレ有
みかみてれんさんの百合同人。「勇者イサギの魔王譚」を筆頭によく名前を聞く著者さんなイメージです。今回が初読書ですが、なるほど上手くまとめてらっしゃると思わされました。
あらすじ
転生したら猫でした。飼い主の女の子が百合百合してるので観察します。
感想
ラノベ貴公「なるほどねーエッチ系な感じの百合ものなのかとも思ったがどちらかといえば友情よりかな？ と思ったが表紙を見る限りひな乃が完全にフェードしていく流れなのか……あ、あーちょっと待ってなんか辛い。そうだよねひな乃が離れていくんだよね分かるけど分かりたくない辛み……あ゛ぁぁーやめてほんとまじで辛いから切ないからなんでそうなっちゃうの二人は幸せなキスをして終了しないの……あーよかったよかったこれで三人がくっついてハッピーエンだぁぁぁっ！！ なんでそういう流れになるの！！ ホント辛いマジ辛い！！ あ、主人公が猫ってそういう役割だったのね（納得）」
ほんわか百合ものなのかと思いきや後半はハラハラさせられっぱなし。
心臓によくないと思うんですよ。
転校してきたと深優と燐香、ひな乃の「キス友」という関係からじわじわと深まっていく三人の間柄がよく書かれていて、後半の一転二転とする展開に思わず力が入りました。
文量的には中編や長い短編にあたる量ですが、構成がコンパクトにまとまっていて読み応えのある作品に仕上がっています。
私的ではありますが、主人公が猫というのもあって「彼女と彼女の猫」みたいな雰囲気を感じました。まあ切なさを演出するには少しはっちゃけた猫だったとは思いますが（苦笑）
キャラクターに関して。
素直に「好き」ってなる三人でした。
でも深優はやっぱり主人公であるべき子だったと思います！
いや言いたいことはわかります。猫が主人公であることが売りである作品になに言ってんだ池沼って言いたいんでしょう？ それでも深優の初めてのキスの描写だとか気持ちの移り変わりだとかを読みたかったなーって思うわけですよ。
なんだろう、たぶんこの作品の感覚は腐女子よりだな。
推しカプを遠くから見ていたい的な感じ。推しカプの住む家の壁になりたい的な……（偏見）
個人的に好きだったのはひな乃。この子ほんとは深優のことめっちゃ大好きなんだけどあえて「一番好き」っていうことで照れ隠ししてるのかなぁだとか、一人だけ違う学校に行っちゃうもどかしさだとか、実は中学の先輩と遊んでたりするのかなぁーだとか、ついつい色々と妄想させられる。この子のおかげで単純に深優と燐香が純愛するよりずっと深みが出たと思います。
燐香はな……ほんとはバトにそこまで思い入れがないけど深優が好きすぎて高校まで頑張っちゃうとことか、それで挫折してから一人で頑張ってるとことかすごい好き。こうして書いてるとおまえラノベ主人公かよ……って言いたくなる。
最後に猫。猫は死んで終わると思ったんですけど死にませんでしたね。最後の雨中を走るシーンが良かったというよりすごかった。暗記した時刻表や雨の日はで歩けないという今までの細かな伏線を鮮やかに回収しましたよね。
台詞も気取ったものではないのにぐっときた。（以下ネタバレ台詞）
大雨の街を一匹の飼い猫が駆け抜けてゆく。けれど胸は少しも冷たくない。たっぷりと愛情を注いでもらったから。私はもう十分に愛してもらえたから。だから、大丈夫。私は、寒くない！
「飼い猫になって百合カップルのイチャラブ生活を見守るお話」より
これが本当に良くて、本作の主人公が猫だった理由がこの台詞のためにあったとさえ言えると思う。ひとりの物書きとしてこういう文を書きたいものだと思った。
総体的な感想としては、百合には間違いないのですが愛情というよりは友情を描いたストーリーだな、という印象を受けました。
恋愛というよりは青春って感じ。思いっきり「愛してる」って言ってるのに不思議だね？ これも猫が主人公だったからかな？ と思います。何度もいうけど深優が主人公でこの作品を読んでみたい。
評価
おススメ度（5段階評価中）：★★★★
★5と迷いましたがもう少し恋愛っぽさや心理描写を読みたかったところです。そこはまあ結局主人公が猫という点で難しいのではと思うのですが、まあ★5なので辛口につけていきましょう。
