ラノベ寄稿

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【感想】スーパーカブ「日常系百合バイクストーリー(?)」

スーパーカブ (角川スニーカー文庫)

 

ラノベ貴公「スーパーカブについて書かれてました」

 

山梨の高校に通う女の子、小熊。両親も友達も趣味もない、何もない日々を送る彼女は、中古のスーパーカブを手に入れる。初めてのバイク通学。ガス欠。寄り道。それだけのことでちょっと冒険をした気分。仄かな変化に満足する小熊だが、同級生の礼子に話しかけられて――「わたしもバイクで通学してるんだ。見る?」一台のスーパーカブが彼女の世界を小さく輝かせる。ひとりぼっちの女の子と世界で最も優れたバイクが紡ぐ、日常と友情。

 

お久しぶりです。久しぶりのセレクトでまた書きにくいライトノベルを……。

 

情報収集もかなり怠っていまして、「スーパーカブ」初版が2017年5月。運よく書店で見つけたのは重版と二巻の発売がちょうど被ってたまたま目に留まったからです。こういう出会いがあるから書店は侮れませんね。

 

内容としては、主人公の女子高生・小熊がスーパーカブを買う話。

バイクを持つことで彼女を取り巻く環境が広がっていく。生活圏や趣味、友人関係。それと対比するように一貫して揺るがない小熊が面白いですね。特に心情の台詞回しが常識人のようでどこか感覚がズレていて個人的には非常に魅力的。

 

 小熊はバイク駐輪場に並ぶ原付をしばらく眺めていた。

 今朝一台の原付に抜かれて以来、妙に原付と言うものが気になる。小熊の知識ではそれなりの値段がするものだということしかわからない。奨学金の蓄えでは手が届かぬ物。

 

──「スーパーカブ」一巻より

 

ステマですよこれは。ついつい読み終えた後にスーパーカブの値段を調べてしまいました。……たっけぇ~。これで一万は確かに破格ですな。

 

著者のバイク日記を女子高生の日常風にして書いているような、見てきたような丁寧な描写が本作をのアイデンティティとしてよく出ている。おそらくは「バイク乗りあるある」ネタが詰め込まれていて、読んだらなるほどと思う方もいらっしゃるんでしょうが、バイクを知らなくても十二分に楽しめる分かりやすい書き方でした。

 

本作とスーパーカブは切っても切り離せないものでありますが、これ著者はバイクを書かなくても面白い日常百合もの書けるんじゃないかなぁ。

 

一巻では百合ものという感じでもないのかな? と思っていましたが、礼子のパートは良い意味で裏切られた。不意を打つのが上手い作品だ。

 

最後、修学旅行にスーパーカブで向かうシーンが非常に好きでした。平日に学校を休むような非日常間を巧みに書いています。冒頭と比べると成長してる小熊が読んでて気持ちいいですね。

 

派手な展開はないものの、つい次の巻を手に取りたくなるような作品でした。是非。

 

 

スーパーカブ (角川スニーカー文庫)

スーパーカブ (角川スニーカー文庫)